草加市中央公民館まつりレポート
2006年10月8日
今回のレポート担当は、倉庫番さん(Cl.)です。
倉庫番
東京駅で最終の「しみずライナー9号」を待つ。
ふとビルの上を見上げると、そこには立待月がおぼろ雲の向こうにあった。
何かをやり遂げたと言う想いもあるが、どこか今ひとつ心の中でははっきりとしていない。そんな自分の心をまさに象徴しているような空の様子だった。
「俺がやりたい事は、これで終わっていいのか?」
そんな想いを抱いて、清水行の最終バスに乗り込む。
オータムリーフ管弦楽団の門を叩いてから1年。
秋から冬、冬から春。春から夏、そして夏から秋。
そんな季節の中に居たのは、30過ぎかつ15年以上のブランクを持つ自分を受け入れてくれた大事な団の仲間たちと、「高速バス」を通して知り合った大事な仲間たち。
ステージに上がる朝、いつもの時間に起き、いつものようにスーツに着替え、いつものように電車に乗ってバス乗り場へ向かう。そして、いつものように譜読みをしながら東京へと向かう。
“Nikoensis—追想—”。今日のステージの最後に演奏する曲。
オータムリーフ管弦楽団に入って、初めて渡された譜面はこの曲であっただけに思い入れが深い曲である。
Mac使いである自分が、出典である「果てしなく青い、この空の下で・・・」をWindowsにもう一度インストールして再度プレイした事もあった。勤務先の昼休み、寒空の下で15年ぶりに譜読みをしたのもこの曲だった。そして、風が暖かくなった3月、勤務先から数分の駿府公園で昼休みに練習をした事もあった。
「どうすれば、この曲の持つ物語を聴かせる事ができるか?」
それをただ考えていた。
東京の休日を楽しもうとするお客さん。隣には東京までの時間を休息に費やすお客さん。
そして、今日のステージに臨まんとする自分。
色んなお客さんの想いを乗せて、東名7804便「しみずライナー4号」は東京へと向かう。
霞ヶ関のバス停では、自分の友人が待っていてくれた。
「10月8日にステージがあるんだけど、良かったらどうよ?」と以前声をかけておいた友人。
こんなオケに入って、こんな曲をやっているんだと話をしたら「俺も楽器が出来れば一緒にやりたいんだけどなぁ」と話をしてくれた。
その友人と日比谷公園の鉄道の日記念イベントを眺め(当然幾つかネタになるアイテムも仕入れ)、銀座で昼食を食べてから、会場入りをする。
とめどもないような話。そう、バスや鉄道、エロゲだけではとどまらない様々な話をしながら会場へと向かう。そして、別れ際に「楽しみにしているから、がんばれ」
その言葉が嬉しかった。不思議な事に、緊張は全くしてなかった。
この時までは。
会場入り。
演奏会の正装に着替え、楽器を出す。今日のステージは本当ならば「通過点」だった。
だが、自分にとっては予想外の「最終到達点」になってしまった。突然の出張命令は、11月26日のステージに立つ事が出来なくなる宣告であった。だが、社会人として仕事をしている以上、それは絶対である。
悔やんでも悔やみきれない。
だが、悔やんでいるだけでは先に進まない。
「後悔したくないから、やれるだけの事はやろう」
そう思うと、今までどこかに行っていた緊張が顔を出してくる。
ロングトーンをし、チューニングをする。そして、入場待機列へと並ぶ。
泣いても笑っても、自分にとってはこれが最後。
「後悔しないか?」
「分からない。だけど・・・、やるしか無いだろ」
ステージの照明が明るくなり、MCが入ってから指揮者が出てくる。
タクトが、曲の開始を告げる。
1曲目 Lapis lazuli〜“夜明け前より瑠璃色な”より、オープニングテーマ〜
パンフレットにこの曲の出典である「夜明け前より瑠璃色な」の作品紹介を書いた。
どんな作品なのか気になって、もう一度これもインストールして全部解いた。
そして、「凛」と言う物語に気付いた。
2曲目 管弦楽のための組曲「リーフ・ミュージカル」より第1楽章「皇たちの凱旋と行進」〜“うたわれるもの”より、「うたわれるもの」〜
原曲とのイメージの違いに正直な話難儀した記憶があった。
何度と無く原曲を聴き、パート譜どころか、スコアも何回となく見直した。
そして、「荘厳」と言う言葉で象徴される物語にたどり着いた。
3曲目 Nikoensis—追想—〜“果てしなく青い、この空の下で・・・”より、エンディングテーマ〜
一番最初にオータムリーフ管弦楽団で渡された譜面。
ただ「もの悲しい」だけの曲では無い。その中に秘められた多くの情感。
「もの悲しさの中にある、様々な想い」、そんな物語を伝えたかった。
3曲の演奏が終わり、指揮者の指示でその場に立つ。
自分にとってのオータムリーフ管弦楽団第2期でのステージは終わった。
それだけは覆す事の出来ない現実であった。
北千住での打ち上げ。本当に楽しかった。
こんな仲間たちと一緒にやってこれた自分を嬉しく思い、本番で演奏出来ない自分を残念に思った。
バスの時間も迫ってきたので、一足先に会場を辞して東京駅へと向かう。

東京のまちを、東名7809便「しみずライナー9号」は清水に向かって走っていく。
夜に沈む大内山の緑を眺めながら、物思いに耽る。
「奏でる人に、歓びを」
歓びを感じた事は出来ただろうか?
「聴く人に、物語を」
物語を伝えた事は出来ただろうか?
少なくとも、こう思う。
まだまだ、足りなかった部分だらけ。
感じたかった歓びの万分の一も感じてなかった。
伝えたかった物語の万分の一も伝えられなかった。
だけど、友人がメールで送ってくれた言葉が嬉しかった。
「今日はいい演奏をありがとう。来年が楽しみだよ」
そう言って貰えるだけの自分に自信を持ちたい。
そして、第3期に向けて、ここから歩き始めよう。
一歩一歩、少しづつでいいから。後悔をしたくないから。
こんな30過ぎ、かつ15年以上のブランクを持つおじさんを仲間として受け入れてくれたオータムリーフ管弦楽団の仲間たち。
色んな所で見守っていてくれた、自分の友人たち。
毎回毎回使わせてもらった、緑色とオレンジ色のつばめマークのバスの中の人たち。
そして、こんな自分を「あんたも物好きねぇ」と言いながらも見守ってくれた自分の家族たち。
本当にありがとう。
そして、これからも、どうぞよろしく。